話題提供 こんな時アサリが増える現象が起きました

   お断り
    2011.年7月のもくはちかいの例会で、話題提供として観察の状況から見た
    アサリの発生について考察としてお話ししたものです。

    塩分測定を始めた以前にも今回の様なアサリの発生の状況は見られていました
    が塩分の測定を始めてから初めてのアサリの発生が多い状況でしたので、ただ 
    運河の中だけの特有の現象かもと思いますし、話題提供の形でお話ししたもの
    です。



                                            2011年7月記
                                                青野 良平 
 
    京浜運河のアサリの大発生に付いて
    (潮の流れ込みがアサリの大発生を促す)   

 2011年春、運河ではアサリが例年以上に発生しました。以前の大発生は2003年でした。
 この両者の発生状況に観察から共通点が見えて来ました。
       
 2003年は巨大発生と言えるほどアサリの発生はすごいものでした、運河の中でもこれ程多く
 の生き物が生息する事が出来のかと感心するほどのすごいものでした、長年の観察でも始 
 めての巨大発生でした。

 2011年春、2003年に比べれば規模は小さいですが、アサリがかなり多く発生しています。
 面白いのは、観察を続けていた中での塩分の動きが似た様な感じになり、そしてこれも観察
 上なのですが、ホンビノスガイの幼貝が2003年の時も、2011年の時も多く見られています、ア
 サリの大発生の時にのみホンビノスガイの幼貝が良く打ち上がっています。
 2002年以前にも、アサリの大発生は有りましたが、残念ながら塩分の測定はしていませんで
 した、もっと早くから測定していれば良かったと思っています。
 塩分の測定は、干潮時の波打ち際で手で届く範囲での所で、出来るだけ同じ位置になる様 
 にして測定しています、ちょうどアサリの生息している部分で潮が上がれば水の中となってし
 まう場所です。

 2002年10月から翌年12月の塩分の動き
  
 

     

2003年1月から12月の塩分変化         

        

                     
  2006年の塩分のグラフは、2002年から勢いのあった潮の流入もこの年で塩分の低下が 
  始まり、元の運河に戻ってしまった感じになりました。
  


  
  その時の塩分の様子です。 この下がった状態で2010年11月中旬まで続きました、春か
 ら秋にかけては雨での塩分低下が有りますが冬は雨が少なく2%前後になります。

                       
  2010年9月から2011年7月の塩分の動き
 

 
 このグラフからの共通点は、大発生した前年からずっと塩分が高く(通常の年では汽水域と 
 言う事で 塩分が1.5%前後で推移しています)、高い状態を維持したまま年を超えています、こ
 の塩分が高いまま長期間続くとアサリの大発生が見られる感じです、今回(2011年)もアサリ 
 とホンビノスの幼貝が多くなっています。

 ここで注目しているのは、塩分がずっと低い状態で来て、急に塩分の増えた(外海からの潮 
 の流れ込み)時の翌年にのみ大発生が見られている事です、2003年の大発生の翌年2004年
 も塩分は高い状態でしたが、アサリは大発生せずに通常見られる時よりもほんの少し多いか
 な程度の発生でした。
       
 従って、低塩分が長く続いた後、外海から濃い塩分の潮が流れ込んで翌年まで続いた年に 
 のみ大発生を起こすのではと感じています。

 2003年の巨大発生は、2002年5月から始まり、この時、砂浜の流出、潮の流入が目に見える
 ほどの流れの力強さとアサリ発生までの前年からの期間が長かった事が挙げられますが  
 2011年の発生は、2010年11月に塩分が上昇し始めて2011年5月の梅雨入り直前まで高い値
 でした、この時特に砂浜には変化は見られず、又、潮の流れも特には目に見えてほとんど変
 化は感じませんでした、2010年から2011年の変化は塩分の測定値だけの変化の感じでし  
 た、それだけ2002年の時と違って小さいものでした。

 従って運河に入って来る潮の流れが強大で期間も長いほど巨大な発生になり、2011年の様
 に流入の変化が小さい場合は、それだけの規模にの様に感じます。 ただ2011年では11月
 と遅いのでアサリの大きさは2003年の時と比べて小さな個体です。
       
 次回に付いては更に10年程の後の事になるのではと思っています、この根拠として2000年頃
 起こったとされる太平洋十年規模振動との関連が有るのではないかと思っています。
 これから先、アサリの生息する潮干帯部分の塩分を測定して行けばアサリの大発生を予測
 する事が出来るかも知れません。

 ただ生息環境が直立岸壁、石積み護岸と単純化、淡水の流入等の影響等で考慮すると、そ
 れに見合った生息種だけに、もちろん砂浜が無くなればアサリはいなくなり観察は出来なくな
 ってしまいます。 
 今、生息している希少種のクレハガイもイソギンチャクが住めない環境になれば生きて行く事
 は出来ず運河から消滅してしまいます。アサリの住める浅い砂浜と木杭、ごろた石等の複雑
 さが混じり合った潮干帯の場所で始めて多様性が出て来ます。

 アサリもごろた石が必要ですし、人間の踏み付ける影響、石をひっくり返したまま等、過度で
 は中央公園の様になってしまいますし、観察のための条件が揃わないと観察を続けて行く事
 は難しいと思っています。今の北埠頭橋の砂浜は人間の出入りも少なく、何かあった場合の
 変化も割と顕著に早く見られます、とても小さな砂浜だけど観察を続けて行く上では都会の中
 では非常に優れた場所になっています。

  そんな条件も今後長く観察を続けるためにはどうしても必要と思っています。


2011年10月追記

  現在、北埠頭橋の砂浜では、8月後半からの2週続けての大雨による酸欠、その後 
  の台風でやや大量に発生したアサリはほぼ全滅状態になってしまいました。

  7月、8月とほとんど雨の降らない状態で経過したのち8月末近くの大雨が降ると運河
  の中では過去からの観察で、ほぼ100%の確率で酸欠が起きて大量死が見られて  
  います。


                   
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